[2]野菜川淳二の怖い話2 [ 2016/8/2 ] |
うわあああああっ!!
周りや店員さんからも悲鳴が聞こえる中、場数を踏んでいるお陰か私はなんとか冷静に写真に納めることが出来たわけです。
実写版ビリーとでもいうのでしょうかねぇ、なんとも気味が悪い演出ですよ。ええ。
しかしあたしもこんなの初めて見た。
これはただ事じゃないぞと注意しながら、実写版ビリーのこの後の挙動に注目していたんです。
すると、
…喜んでるんですねえ。
このビリー喜んでるんですよ。
出目はよくわからないし、一体どうなるんだー、何が起きるんだーと思っていたら…
…BCに当選したんですねえ。
ええ、謎当たりです。
いやーこんな事ってあるんですねえ。
きっと運が良かったのでしょう。
なんとかそのBCでバジリスクタイムに突入することが出来たんです。
ああ良かったと胸を撫で下ろすも、すぐに気持ちを切り替えてBTに挑まないといけません。
大概の人は、BTに入った喜びの余韻に浸りながら気の抜けたレバーオンを繰り返すせいで良い結果を残せない、とあたしは聞いていましたからね、毎G本気のレバーオンですよ。
ええ、完全にオカルトの話です。
さあ争忍の刻だ。
奇数でお願いしますよと台のチャンスボタンをペチペチと2度叩きレバーオンした。
4対5
ええ、この瞬間に心がざわついたのを今でも覚えていますよ。
妙な雰囲気が漂うなか、第三ボタンを押した瞬間…
びゅるびゅるびゅるぽいぴぴぴー
いやー、やっぱりこういう事ってあるもんですねえ。
しみじみ感じますよ。
ってなもんで、順調にBCを3連程したあたりでアタシは用を足しに席を立ったんだ。
その時、一緒に来た友人の事をハッと思い出した。
彼は今日はまどマギがアツいんだと言いながら萌えスロコーナーへ走っていきましたから、ちょっと覗いてみようかと思いましてね。
年に一度のイベントなんだ。
まどマギだって他の萌えスロにだって設定が入ってたっておかしくないぞー、ってなもんだ。
でもね、島の入り口に立って気付いた。
なんかおかしい。
まどマギの島、いや萌えスロコーナーの気配がおかしい。
なーんか湿ってる。
なーんかおかしい。
もちろん全台満席ですよ。
座っているのは百戦錬磨で尚且つ汗っかきの屈強な戦士達だ。
でも、みーんな一様に顔を伏せているんだ。
ええ、屈強な戦士達が怯えているんですよ。
そんな中に、俯いたままの友人を見つけたんで、あたし声をかけたんだ。
「おいおい、どうしたんだ?辛気くさいぞー」ってね。
ええ、空元気ですよ。
でもね、一言も返事がない。
その友人の高橋…いやAさんとしましょう。
友人Aは普段は豪気な奴でねー、明るい感じの人なんですよ。
酒なんて一緒によく飲みますからねー。
友人Aは俯いたまま何かをぶつぶつ呟いている。
あたしの事なんか見てもいないで、
「やばいやばいやばいやばいやばいやばいや…」
お経みたいなことを言ってる。
聞こえないんで近づいてみたんですよ。
おーい。って呼びかけながらね。
ある訳ないんだ。
ある訳ない。
あってたまるか…。
彼ね、泣いてたんですよ。
大の大人で屈強な萌えスロハンターの友人Aが、泣いてたんですよ。ええ。
他の皆も同じですよ。
みーんな泣いてるか怯えてる。
常連のマクロスおじさんなんてね、白目を剥いて泡を吹いてますよ。
あたし思った。
これはただ事じゃない。
これはただ事じゃないぞって。
それでね、萌えスロコーナーの中を突っ切ってね、台の履歴を片っ端から見てみたんだ。
全台が高層ビルですよ。
ええ。
ここはマンハッタンかと間違える程の高層ビル郡ですよ。
まどマギだと、一番早い初当たりの人でも500Gくらいだ。
友人はおは天の寸前からプチボ、そして600G台でまたプチボ。
もちろんARTは無し。
そして今、200のゾーンをスルーしたところだったんですねえ。
いやー、こんなことってあるもんなんですねえ。
それであたしはいたたまれなくなってねえ、友人の肩をぽんと叩いたんだ。
そしたら、ふぅっ、と彼は席を立ち上がって、そのまま自動ドアから店を去っていったんですよ。ええ。
後に友人から聞いた事なんですけどね、前日に夢を見たらしいんですよ。
亡くなったおばあちゃんが出てきて、「行くなー、行くなー」、ずうっと言ってたそうです。
今思えばこの事だったかもしれないなー、なーんて笑ってましたけどねえ。
けれどね、友人はぼそっとあたしに言ったんだ。
「いやー淳ちゃん、こんなことってあるもんなんだねー」
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