[2]バレンタインデーの悲劇 [ 2015/4/7 ] |
その日もいつものように夜まで打ち、そこそこの出玉を交換した。
バレンタインデーということで、景品カウンターにはチョコレートがたくさん並んでいた。
私は余り玉で大きめのチョコをもらった。
そして当時お気に入りのサウナに寄り、風呂に浸かったりしながら一日の稼動の疲れを取り、髪も半渇きのままバイクで帰宅した。
家に帰ると鍵が開いていた。
締め忘れか?
深く考えず家に入ると、そこには彼女が座っていた。
実は体調不良は嘘で、サプライズでケーキとプレゼントを渡したかったようだ。
しかし、電気をつけたときに彼女の目に飛び込んできたものは…
片手にチョコレートをぶらさげている、風呂上りの男であった。
その日打っていた店は、圏外で電波がはいらない。
何度も連絡したらしいが、もちろん繋がらない。
最初から疑惑を持って私を待っていたところに、帰ってきたのはチョコ風呂男。
「どういうこと?」
凄い剣幕で、いつもとは違う低いトーンで質問をしてきた。
私は状況が理解できずにオロオロしていると、そこへ空気を読まずに鳴る携帯。
「誰から? 見なよ。」
「いいよ。 後で。」
「いいから見なよ。 一緒に見てあげるから!」
もうこいつを止められない。
恐る恐る一緒に見た携帯に映る文字。
昨日、打ちに行くのを誘った友人からであった。
「狙いはどうだった? 当たりだった?」
いつもどおりの何気ない会話。
毎日のようにやりとりしてる他愛もない会話。
ただ、今のこの状況では、彼女の思考回路を間違った方向に誘導するものでしかなかった。
そして、この一文が彼女の疑惑から確信へのアシストになったのは間違いない。
私は焦って、早口で話す。
「違う違う違う! 暇だからちょっとパチンコ屋行ってみてさ、かっ帰りにサウナ寄っただけ! あっ、それでこのチョコはパチ屋の景品で、それで友達のメールの意味は…」
「もういい。」
彼女は私の話を最後まで聞かずに家を出て行った。
私は何も嘘をついてない…。
むしろ嘘をついていたのはあんただ…。
そんなクソみたい思考も若さ故。
友人には皮肉を込めて一言返信した。
「ナイスアシスト」
後日、彼女とはゆっくり話をし、バレンタインデーの誤解はとけたが、彼女が高熱出していると思っていながらパチンコに行ってたこと。
そもそもギャンブルをやる人が生理的に無理なこと。
こんなことから二人の関係は終わった。
これが私のバレンタインデーのほろ苦い思い出。
圧倒的ビターな思い出である。
ちなみにこの時もらったプレゼントは、高機能の体重計である。
沖縄までに二人で痩せようとダイエットしていたからだ。
その体重計は、実は未だに活用している。
当時より10キロ近く重くなった体が年月の流れを物語っている。
そして時は2015年。
今年のバレンタインデー。
軽く打ってきましたよ。
仕事終わりに甘デジをほんとに少しだけ。
えっ?
結果はどうだったかって?
えぇ勝ちましたよ。
チョコッとな。
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