[2]見てはいけないもの [ 2014/7/17 ] |
その人は、中段チェリーから軽々とATに当選し、激闘乱舞IN上海なるものに突入させていた。
隣りは見ないように、気にしないようにとプレイしていると・・・やらかしてしまった。
追加投資でコインサンドから出てくるコインのレールを、下皿にセットしないまま貸コインのボタンを押してしまったのだ。
慌てたところで時すでに遅し。
自分とその人の足元に20枚近いコインが散らばった・・・と同時に、ヤーさん(勝手に命名)と目が合ってしまった。
というより、目が合った瞬間ヤーさんだと確信した。
綺麗に磨いたスキンヘッドに加え、眉間にしわを寄せ、今にも殴りかかってきそうな不快な目をしている。
激闘乱舞にてタコ殴りにされる仲間たちを見て、拳志郎に怒りをにじませていた最中だったに違いない。
北斗の拳だったならば、あだ名は「ハート」で決定だっただろう。
ヤーさんは足元のコインに目をやると、再び私の方を見てスッと席を立った。
私は深いため息をつき、ある程度の覚悟を決める。
ところが次の瞬間、なんと彼はしゃがみこんでコインを拾ってくれたのだ。
今思えば、座ったままコインを拾えない、体の堅い優しいオジサンだったのかもしれない。
人は見かけによらないとはいうが、やはり見かけは大事だ。
面接試験では、第一印象が7割を支配するという。
もともとその台は、小役確率がイマイチだったこともあり、足の震えが軽くなったところで移動を決めた。
≪2nd story 『好みの服を着た良い香りのする女性』≫
移動先は、アナザーゴッドハーデスだ。
300G台からヘルゾーンを狙いに行く。
しばらくして、背中にさわやかな風を感じた。
私の大好きな優しい香りのおまけつきだ。
その甘い香りのする白いフワフワしたものが、隣の席へやってきたのだ。
その女性は、短パンからスラッとした白い足をのぞかせ、ややかかとの高いヒールを履いている。
髪は若干茶色がかっており、上着には白いレースのようなものを身に着けていた。
私は、白いフワフワとした、妖精のような服を着た女性は大好きだ。
ぶっちゃけ全国の制服は、リボンだとかネクタイだとかそういう問題ではなく、全部白いフワフワしたレースになればいいと思っている。
それにしても、アナゴが目押し不要の台だったことが残念でたまらない。
目押しが苦手そうな隣の彼女の変わりに、ボタンを優しく押して差し上げただろうに。
ビタ押しが必要だったならば、彼女の腕を掴んで一緒に押して差し上げただろうに。
そんなことを考えていると、やはり顔が気になるものだ。
勇気を振り絞り、後ろの台の音が気になるなぁ〜という仕草で覗いてみることにした。
後ろの台のウーハー音が響いたところで勢いよくチラ見する。
そしてゆっくりと顔を自分の台へ戻した。
隣に座った天女様は、おそらく50〜60代と思われる、スウィートな香りがするだけのオバサマだった。
見かけで人を判断してはいけない。
だが、ここまでくるとさすがに厳しいものがある。
仮に私の母親が同じ服装をしていたならば、全力で外出を食い止めるであろう。
いつまでも若い気持ちでいることは大切だ。
だが、こういうオジサンには絶対なりたくはない。
彼女には、自分チョイスの服をいつまでもプレゼントしてやろうと心に誓いつつ移動することにした。
店内を見回すが、打ちたい台もおいしい台も見当たらない。
やはりスロは「楽しむこと」が本流だ。
大好きな夢夢ちゃんと戯れるため、5スロコーナーに設置してあるボンバーパワフルへ向かうことにした。
≪3rd story 『私の捨てた・・・』≫
さすがは5スロといったところか、設定もそこそこな様子。
楽々とARTをゲットし、順調にコインを増やした。
ボンバーパワフルは大好きだが、ボンパワか夢夢ワールドかでいうと、夢夢ワールド派だ。
是非ともメーカー様には、小役のV字チャンス目を復活させて夢夢ワールドVに挑んでいただきたい。
コインが増えると気分もよくなり、喉が渇くのがスロッターというものだろう。
自動販売機へ向かう途中、視界に入ってきたのは、私の捨てたアナゴに座っている無駄にいい香りのするオバサンだった。
毎ゲーム何を狙っているのか全く分からないが、リールをにらみつけながらペチペチボタンを押している。
設定にもゾーンにも希望が見えない台には興味がない。
心の中でおばちゃんに「ドンマイ」と言い残して自動販売機へ足を進めた。
次に目に入ったのは私が回していた蒼天の拳2だ。
座っていた若者は、二箱目を必死に俵詰めする最中だった。
台を見ると【天授】のランプが点灯している。
しかも、隣に座っていたヤーさんに「兄ちゃん残念やったねぇ。なんでやめたの?」と大声で話しかけられる始末。
「あんたが怖いからだよ」と心の中で捨て台詞。
愛想笑いで返事をし、自動販売機でコーヒーを買って夢夢ちゃんの元へ戻ろうとすると・・・
視界に入ってきたのは、やはりスウィートオバサンだった。
あのアナゴには散々裏切られた後だ。
気にする要素は微塵もなかったはずだ。
しかし、どうしても目立ってしまうゴッドステージに滞在中。
それでも何を狙っているかわからないが、オバサンは慎重に一つ一つ液晶とリールを見比べながらボタンを押している。
レバーを叩くその人のタイミングと引き次第なのは十分に理解しているのに。
それでもやはり、あと数回転回していれば、私がウハウハだったかもしれない。
どうしてもそう思ってしまう悲しさよ。
大好きな夢夢ちゃんなのに、それなりの出玉を得ることができたのに。
こんなにも切ない気持ちになるとは。
ART終了後の「おつかれたまでちた」が嫌味にしか聞こえなかったのは言うまでもない。
景品を交換し、店を出る際に、ハートのヤーさんが激しく台パンしているのを見て、一日が終わる。
何とも切なく、儚い一日であった。
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