[4]猫とハイエナのバラッド [ 2016/10/24 ] |
■『黄金神』 (オリンピア 2003年11月)
所謂4号機爆裂AT機の流れをくむ機種の末裔。
高確と低確を頻繁に行き来する上、潜伏がかなり長く、演出判断が重要な台であった。
全盛期機種ほどワンチャンスでの一撃性は無いが、ツボにハマった時の破壊力は見劣りしない。
AT「黄金RUSH」は液晶に出てくるクレオパトラ風のキャラクターから、愛好家には楠田枝●子RUSHとも呼ばれていた。
いや、似てるのは髪型だけだろ。
私が黄金神と対峙したのは地元で有名なボッタクリホール。
当時既になつかしの珍台扱いだった金色の神様は、連日ベタピン状態のバラエティコーナーにて初打ちとなった。
前月に『アントニオ自身がパチスロ機』で8000枚を出していた私は、AT機はリスクがあると理解しながらも、その破壊力の虜になっていた。
この黄金神はどんな台だろう、同じ系列のAT機だ、きっと楽しく打てる。
おおまかな機種情報も頭に入っている、負けやしない、勝負だ。
単純に打ちたいという気持ちが大きく、否定する要素を自分の中で潰していった。
前日までしか情報が見れない旧式のデータランプを確認する。
【前日700Gノーボーナス、本日150Gノーボーナス】
当時のAT機も現在と同様に、いかに長くATに滞在させてチャンスメイクするか、ということが出玉のキモの部分だ。
チャンスを多く拾える天井狙いは、勝利のために有効な手段の一つだろう。
【第一天井1200G 第二天井1999G 天井恩恵はAT当選】
これが黄金神の天井情報。
いける、宵越し天井狙いだ。
私はこの店で何度も天井狙いを成功させていた。
競合が少ないため、稀に驚くような状態の台も放置されていた。
最低でも850G以上はある、前々日を考慮すれば1000G以上の期待はしていいはずだ。
前日に700G回した人には申し訳ないが、知らないヤツが悪いのさ。
興味本位でバラエティ台を打ち散らかす前に、もっと知識をつけるべきなんだ。
好奇心は猫を殺す
猫は…
猫は…
……私だった。
ATに入らない。
データランプは500Gをまわったところ、昨日と累計で第一天井は過ぎている。
古いデータランプ機だから表示がズレていたのか?
いや、黄金神の潜伏はかなり長いという、きっともう少し回せば黄金RUSHに突入するだろう。
700Gを突破。
リセット?
いやまさか、前々日に500G程度回っていて、前日は第一天井確認後ヤメだったに違いない。
予想とは違ったが、そうするとあと200Gで第二天井だ、この程度すぐに取り返せるさ。
1000Gは静かに過ぎていった。
潜伏じゃない、リセットされている。
目の前の現実を受け入れるのにも時間を要した。
バカな、このホールのバラエティは通年ベタピン営業のはず……
今までもこうして勝ってきたんだ、これは何かの間違いだ……
自称中級者の間抜けな猫は、自分の立ち回りを過信した。
このホールが設定を変えない、などというのはあくまで傾向。
ちょっとした気まぐれで簡単に覆るものだ。
1200Gに到達。
ワンセットのATで僅かばかりのコインを手にする。
望みをかけるもそれ以上の継続は無し、液晶上で静かに佇むスフィンクスが私を嘲笑っているようだった。
かなりの投資額を消耗した私は、もはや後には引けなくなっていた。
いや、本当にうまい立ち回りができる人間であればそこで退く決断もできただろう。
しかし、もうそんな考えも浮かばぬほど、熱くなってしまった私がいた。
第ニ天井だ、そこで爆発するはず。
AT機はきっかけさえあれば数時間で5000枚だって夢じゃない。
それが叶わぬ愚かな夢であることは、今の私ならば察することができるかもしれない。
「やめろ、無茶だ」
「それは賢い立ち回りじゃない」
当時の私に、その声は届かない。
そしてそうなると転げ落ちるのは一瞬だった。
その日、私はパチスロ人生で最大の敗北を喫する。
−4150枚。
第二天井到達後、100枚と少しのコインを吐き出し、黄金神は完全に沈黙した。
あまりの悔しさに、下皿にコイン30枚程度残したまま席を立ち、逃げるように店を出たのを覚えている。
もしかしたら、人もまばらな店内で何度も呼び出しがかかっていたかもしれない。
若気の至りとはいえ、ホールには申し訳ないことをしてしまった。
根拠の薄い台への過度の期待、ただ単に打ちたいという欲求を抑えられぬ若さ、欲望をはらんだ私の好奇心を待ち受けていたのは、忘れられぬ手痛い負けだった。
本当に猫であったならまだ可愛げがあっただろうか、そう考える紳士な私の思い出である。
これを読んでいる上級者の諸兄は、当然こんな雑な立ち回りはしませんよね?
おや、自信満々に応えた貴方、明日の猫は貴方かもしれませんよ……
Curiosity killed the cat…
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