[2]出禁物語W 〜お前、●●やないんかぁーい!〜 [ 2014/7/11 ] |
すると、シャッターが50cm程上がった所で、常連客グループはほふく前進し、シャッターの隙間から入店して行きます。
中では、店員が「危険ですのでくぐらないで下さい!」と、常連客が先に入ったのを確認した後、一般客が同じ様にくぐろうとしているのを制止していました。
私は胸ぐらいの高さまでシャッターが上がった所で、軽くかがんで入店。
一般客では先頭でした。
すると、一人の店員が私の前に立ちふさがり、肩をドーンと。
そのまま腕を引っ張り事務所に連れて行かれます。
よく見るとその店員、私とさほど変わらない年齢のようですが、いかにも『やんちゃしてます』てな感じです。
しかし、『新装開店』時は店も超多忙で、店長以外の従業員は事務所に入る事は無いだろうと判断。
この店員のことを、若くして店長に抜擢された『やり手』だと思ったんです。
すると、煙草に火を付け私に言いました。
「危ないからシャッターくぐるなって聞こえんかったか?」
「聞こえましたけど、開いてから入りましたよ。」
「くぐっとったやんけ。」
「えぇ〜? ちょっとかがんだだけですよ。」
「それがくぐってるんや!」
「けど、僕の前に入った人達もいましたけど?」
「は?」
私が「僕の前に入った……」と言った瞬間、私の胸倉をつかみ体を壁に押し付け、鼻面に煙草の火を近づけ言います。
「もう一回言ってみろ?」
もう私は「すみません…」と言う他ありませんでした。
すると彼は「チッ!」と舌打ちし、「お前、もう絶対ウチの店くんなよ。」と言い、手を離しました。
私は既にこんな店では打つ気がしなかったので、早く店を出ようと「はい、分かりました」と振り返りました。
すると…
「ちょっと待て! 誰が帰ってええって言った?」
と、私を引き止めます。
「まだ何かありますか?」
「メンチ切っとったやろ?(注)」
(注)
メンチを切る=睨みつけると言う意味。
主に関西地方で使われており、ケンカを売ったり、言いがかりを付ける時に使われる。
同義語「ガンたれる」。
〜Vitapediaより抜粋〜
私はこう見えても、これまでにいくつかの修羅場を経験しています。
ですので、「あぁ、そ〜ゆ〜事ね。」とピンときました。
案の定彼は私の肩に手を回し、人目につきにくい事務所の隅に誘導し、こう言います。
「お前、金なんぼ持ってんねん!?」
これは想定の範囲内。
はいはい、そっちが目的ね、と思い軽くため息をつくと。
「ナメんな!!」
と、再びタバコの火を私に近づけます。
ここで私にスイッチが入り、『やられたらやり返す。』って気になり、殴り合いも辞さないと考えました。
自慢ではありませんが、私はこれまで、殴り合いのケンカで負けた事がございません。
もちろん勝った事もございませんが……。
早い話、殴り合いなんてした事ありません。
そんな理由で、殴り合いと言う選択肢は早々と無くなりました。
このままお金を渡せば無傷で帰れるでしょうが、そんなの納得できません。
頭をブン回し考えた結果、ここは私の得意技を出すべき時だと判断しました。
そう…
私の得意技…
……『逃げる』です。(笑)
しかし、事務所の隅でしたので逃げるルートが塞がれています。
もう諦めてお金を渡してしまおうかと思った、その時です。
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