これは、僕が以前勤めていた会社での話。
朝、いつものように出社し、日課である休憩ルーム(要は一服する部屋)へと入る僕。
すると、そこには『ミニサイズな男』こと、S先輩がいました。
『S先輩』なんて呼ぶの面倒なんで、今後は『ミニ』で通します。
ちなみに、ミニなのは身長ではありません。
中身です・・・・・・・
「朝からダルいヤツと会ったなぁ」なんて思いつつも、軽く挨拶をかわしおもむろにタバコに火をつけ一服。
そして次の瞬間、彼が楽しげに話しかけてきました。
ミニ 「俺さぁ、最近格闘技始めたんだよ。 あ〜 身体がいてぇ〜」
この時点でウザさ全開です。
なんなんですかね。
「俺ってこれから強くなっちゃうよ〜!?」
とでも言いたいのでしょうか?
こういうのって、普通は聞かれたら言うとか、何か関連した話題の時にふと話すモンじゃないですか?
もしくは、それにまつわる何か面白い話でもある時に話すことじゃないですか?
それをこの男ときたら、なんの脈絡もなく朝一発目のかったるい一服タイムの時に、意気揚々とこんな話題を吹っかけてくるのです。
もちろん、この男のパターンから考えるに、それにまつわる面白い話があるわけでもなく・・・・
つまり、
聞き手が自力で話を広げてやらなければならないのです。
心底ウザってぇ・・・・・・
しかし、悲しいかなそこはサラリーマンな僕。
一応先輩に当たるこの男の話には付き合ってやるしかありません。
僕 「へぇ、いつから始めたんですか?」
ミニ 「昨日からだよ。」
(・・・・・・・・・痛ッッ!)
(昨日かよッ!!)
(昨日の今日で早速報告かよッ!!)
(つーか、だったら「最近始めた」とか紛らわしい表現使うなよッ!!)
・・・・・・と、心の中で鬼の突っ込み4連弾をかましておき、なんとか会話を続行するための気力をチャージ。
このくらいウサ晴らししとかないと持ちませんって。
誰か他の人がくるまで持ちこたえねば。
誰であろうと、来た時点で速攻バトンタッチだ。
こんなことを考えながらやむなく会話続行。
休憩室とは名ばかりの、ただの苦痛な空間でしかないこの一服ルーム。
僕 「昨日からですか・・・・・ で、なんの格闘技始めたんですか?」
ミニ 「ん? ああ、ボクササイズ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この場で笑ってはいけない。
それはわかっていた。
しかし、自然とあふれ出てくる笑いを押さえることはできなかった・・・・・・・・・・・・・
まず最初に解説しておきましょう。
ボクササイズとは、
要は単なる運動のこと。
つまり、自宅で腕立てやら腹筋やらを開始してるのとなんら変わりない。
一応、『ボクササイズ』についての公式の説明を見てみよう。
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ボクササイズは、プロボクサーを目指す方たちのトレーニング法を、
ダイエットと体力増強を目的にアレンジしたもの。
名称はボクシングとエクササイズを掛け合わせたものですが、内容的には
ボクシングの基礎トレーニングにかなり近いものになっています。
そのため、
一般的なダイエット法と比べると健康的で、トレーニング効果も一目瞭然です。
《ボクササイズの3大効果》
・ダイエット
・体力増強
・ストレス発散
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早い話が、ボクシングから格闘性を取り除いたものこそがボクササイズ。
一度生でみたことがあるのですが、圧倒的に女性の比率が高く、
「はい、ワンツー♪ワンツー♪」みたいな感じの掛け声で音楽に合わせて
楽しそうに動いていました。
どちらかというとエアロビに近い。
そんなボクササイズに対し、自慢げに「格闘技始めたんだぜ〜」などと言われた俺の気持ちを想像して欲しい。
誰が笑いを押さえられるだろうか。
たまらず笑ってしまった僕を見て、不思議そうにするミニ。
ミニ 「・・・・・・・・・どうした?」
僕 「い、いや、ちょっと思い出し笑いを・・・・・・・」
ミニ 「・・・・・・・そっか、まあいいや。」
まさか自分が笑われているのだとは想像もしないミニ。
ある意味大物だ。。。
しかし、
彼の猛攻撃はまだまだ終わらなかったッ・・・・・・・・・・・・・
ミニ 「右ストレートの打ち方教えてあげようか? 昨日マスターしたんだよ♪」
痛ッッッッッ
何がイタいって、なんとこのミニ、
その場で超ヘッタクソなシャドーボクシングなんぞを始めやがったのです・・・・・
別の意味で鳥肌立った。
「マジでやめてください。」という、
思わず出た僕の真剣な言葉が響いたのか、彼の自己満足極まりないシャドーをなんとか中止させることに成功。
やれやれ。。。。
なんとなく会話が止まってしまい、気まずさから再び口を開く僕。
僕 「・・・・・・・ちなみに、なんでいきなりボクササイズなんて始めたんスか?」
次の瞬間、彼はやはり
期待に応える返答をしてくれました。
ミニ 「決まってんじゃん。 チーマーとかヤクザとかから身を守るためだよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゴメン・・・・・・・・・・・
俺には言えなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ボクササイズじゃ、チーマー・ヤクザどころかそのへんのちょっとケンカの強い中学生すらも厳しいということを。
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