男なら誰でも、『親とエロ本』にまつわる苦いエピソードを一つや二つ持っているものだ。
例えば、俺が知っている友達のエピソードは以下のような感じ。
●部屋の各場所に散らして隠しておいたエロ本が、ある日、机の上に全冊ドーンッ!と置かれていた
●学校が終わって家に帰ると、引き出しの奥深くにしまっておいたはずのエロ本が、なぜかすべて綺麗にジャンル分けされて本棚に並べられていた
どれも、実際に喰らった時の衝撃を考えると、身震いせずにはいられない。
ではここで、俺の「親とエロ本にまつわる仁義無きバトル」をお送りしてみようと思う。
あれは、たしか15歳の時。
身分は中学三年生。
最もエロ本を欲する時期でもある。
授業を終え、部活をこなし、へとへとで帰宅。
そしてすぐに晩飯。
この頃は毎日がこんな感じ。
日々、体力を残すことなく、疲れきるまで活動していた。
晩飯を終え、部屋に入ってしばらく休息。
一心地ついたところで、おもむろに引き出しから「例のブツ」を取り出す。
そう、『エロ本』だ。
しかし、授業・部活でへとへとになり、挙句晩飯まで食ってしまっているため、当然眠くて眠くて仕方がないわけで。
え? じゃあ読むなって?
それは無茶な注文というもの。
登山家に向かって「山に登るな」って言ってるのと同じだ。
登山家は、そこに山があれば登らざるを得ない。
中学生は、そこにエロ本があれば読まざるを得ない。
これは、最早『条件反射』と呼んでいい。
ってことで、ベッドで横になりながら、おもむろにエロ本を手にし、ペラペラとめくりだす。
だが、日々全力を出し切って生活しているそんな疲労からか、いつしかエロ本開きっぱなしで眠ってしまった俺。
そして、時は無情に流れる・・・・・・・
しばらくして目を覚まし、ふと時計を見ると既に22時くらい。
2時間くらい眠ってしまったんだな、などと呑気に思っていた、その時だった。
なんと、
目の前に開かれていたはずのエロ本の姿が、忽然と消えているのだ・・・・・
それどころか、目の前にあったはずのエロ本が、よりにもよって
英語の教科書なんぞとすり替わっていやがったのだッ・・・・・・・・
俺は戦慄を覚えた。
「『エロ本』と『英語の教科書』・・・・・ 間違っても互いに相容れぬ、180度性質の違うものじゃないか・・・・」と。。
だが、そんなことはどうでもいい。
それよりも気になるのは、なんでこんな事態に陥っているのかということ。
とりあえず俺は、一心不乱にエロ本の行方を追うことにした。
一体どこへ・・・・・?
必死で探し回ること5分。
あらゆるところを探索した結果、ついに問題のブツを発見できた。
しかし・・・・・・・ なんとその場所は、元の定位置である引き出しの中・・・・・・
ということは・・・・・ どうやら、母親には完全把握されていた模様。(その時家にいたのは母親のみ)
そうか・・・・・・ 母親にすりかえられていたのか・・・・・・・・・
その日からしばらく、俺が家でまともに食事を摂らなくなったことは言うまでもない。
とてもじゃないが、そんな失態をさらした直後に、呑気に家族と食卓を囲む勇気など俺にはなかった・・・・・・・・
そして15年近く経った今でも、依然真相を聞けないままでいる。
俺は、これは一体どういうことだったのかを、今更ながら真剣に考えてみた。
たまたまNHKかなんかで、子供の教育について熱心に語っている番組にぶち当たり、キャスターの熱弁にやたらとインスパイアされてしまった母親。
勢い余って、そのまま息子の部屋へ突入を仕掛けた。
ところが、いざ息子の部屋に入ってみると、あろうことかそこにはまさかのエロ本。
まさに、自分が言おうとしていたことと真逆の行動をとっていやがる始末。
頭にきた母親。
そのへんに転がっていた英語の教科書を手にし、禁断のチェンジ発動。
息子、目を覚ますなり唖然呆然。
弱冠15歳にして、「絶望」の意味を知る。
こんなとこかな、と。
・・・・・・・・・ちなみに、29歳独身男性が、PCに向かって都合16回にわたり「エロ本」というワードをタイピングしているという悲しい事実については、是非気付かないフリをしてもらえたら幸いだ。
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