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ゴーストスロッター 第82話



■ 第82話 ■

「おい・・・・・ テメェ、どうなってんだよ・・・・?
  説明してもらおうか。」

設定発表後、ドスのきいた低い声を放ちながら優司の元へやってきた鴻上。

広瀬は、少し離れたところから様子を見ている。

文句を言いに来た鴻上の表情は、意外にも穏やかなものだった。
というより無表情に近かった。

顔を真っ赤にしながら喚き散らしてくるのかと予想していたので、この鴻上の反応に少々
戸惑ってしまった優司。

だが、すぐに気持ちを建て直して対応した。

「俺も驚いてるんだ。
  わかるだろ?
  俺だって百発百中で設定を当てられるわけじゃないんだよ。」

この時点で騙したことがバレると、鴻上が飯島を先に帰してしまう恐れがあるため、とりあえずは
「真面目に設定推測したがハズした」という形でいくことにした。

しかし鴻上も、ここまできたらさすがに何かがおかしいと気付く。
少し声を荒げながら、優司に詰め寄った。

「俺もお前も6じゃなかった、ってんならまだわかる。
  でもな、お前にはしっかり6の札が刺さってるよな!?
  で、俺はきっちりスルーされてる。
  こんな偶然あるか!? ええ!?
  今まで、驚異的な確率で設定6を当ててきたお前がよッ!!」

「だから、俺も驚いてるって言っただろ?
  かなりのプレッシャーがあったってのもわかってくれよ。
  俺がここで失敗すれば、元彼女がお前にとんでもない目に遭わされる。
  これがどんだけプレッシャーかわかるか?
  そりゃ動揺もするよ。」

優司の言葉を受け、少し考え込む鴻上。

「・・・・・・・・・・そうかよ。
  とにかく、こういう結果じゃ由香がいてもしょうがねぇ。
  あいつは帰すことにするよ。
  で、再勝負ってことにしようぜ。」

内心、ギクリとする優司。

かなり焦っていたものの、その様子を悟られないよう平静を装いつつ、慎重に言葉を選びながら
話し出す優司。

「いや・・・・ とりあえず飯島は残しておいてくれよ。
  あの・・・・ やっぱり今でも未練があるし・・・・ 一目見たいんだ。」

「ああ?」

「今回は俺の不手際でこうなっちゃったけど、次は絶対に失敗しない。
  ちゃんと俺は負ける。
  お前に6を掴ませる。
  で、そうなったら鴻上は飯島と別れてくれるんだろ?」

「まあな。 お前がきっちり仕事をすればな。」

「だろ?
  そうしたら、俺にもチャンスが回ってくるんだろ?
  飯島と付き合えるチャンスが。
  その時のために、一目会っておきたいんだ。
  ちょこっとでも会って、言葉の一つ二つ交わせればそれでいいから。」

「・・・・・・・・・・・」

話が無理矢理すぎたか、とちょっと反省したが、言ってしまったものは仕方が無い、と割り切り、
話を続ける。

「頼むよ鴻上!
  俺が、今まで築きあげてきたもの全部捨ててまで助けようとしてる女だよ!?
  それくらいさせて欲しいって思うのは当然だろ!?」

迫真の演技で真剣さをアピールする。

そしてこの優司の様子を見て、少し考え込む鴻上。

「(どうするか・・・・
  面倒くせぇな。
  でも、なんとしてでも俺はこいつに勝たなくちゃならない。
  土屋にあれだけ大見得切ったんだしな。
  土屋相手に『失敗しました』なんて言ったらただじゃ済まないし。
  ここで開き直られて、やっぱり八百長勝負はしない、とこられたら俺も困る。
  ・・・・・・・・仕方ねぇか。 一目会わせるくらいなら問題ないだろ。)」

少々考え込んだ結果、結論を出した。

鴻上も鴻上で、思うとおりに進まなかったことで実は相当焦っていたのだ。

「わかったよ。 しょうがねぇ。
  でもな、本当にちょこっとだぞ?
  すぐ由香は帰すからな。
  あと、由香に会ったら、なんでお前がここにいるのかってことについて、適当に上手い言い訳を
  しておけよ。
  スロ勝負してたなんて言えねぇからな。」

「おお、ありがとう! 助かるッ!
  言い訳の方も大丈夫だよ!
  俺、そういうの上手いからさ。
  じゃあ、さっさとコイン流して店を出るよ。」

「・・・・・・・ああ。 急げよ。
  換金所の近くにある自販機のところで、由香と二人で待ってっから。」

「ああ、わかったよ。」

「・・・・・・・・・ちなみに、由香相手に余計なことを喋るんじゃねぇぞ。
  面倒くせぇことで時間を取らせるなよ。」

立ち去る間際、低い声でポツリと言い残していった。


**************************************************************************


コインを流し、レシートを受け取る優司。
傍らに広瀬もいる。

「いよいよだな、夏目。」

「うん。 あいつ、相当頭にきてたよ。
  最初俺んとこ来た時なんか、怒りを通り越して無表情になってたからね。」

「なるほどね・・・・
  まあ、そうなるだろうね。
  あんだけ妄信的に自分の勝ちを信じてたんだから。
  設定発表の時あいつの様子を見てたんだけどさ、札が刺さらなかった時の顔、凄かったぜ。」

「凄い・・・・って?」

「人があんなに目をひんむいて驚いてるとこなんて初めてみたよ。
  あれがそのまま怒りに変わったんだろうから、そりゃ相当ムカついてんだろうね。」

「ざまぁみろだよ。
  それ聞いて少しはスッとしたね。
  まあ、こんなもんじゃまだまだだけど。」

「ところで夏目、なんか鴻上と長々喋ってなかったか?」

「ああ、そうそう。
  危なかったんだよ。 飯島が帰されちゃうところでさ。」

「・・・・・なるほどね。 そりゃそうくるよな。
  こうなった以上、鴻上にとっては飯島って子がいても意味ないんだもんな。」

「でも、なんとかひっくり返したよ。
  一目会わせてくれ、って懇願してさ。」

「そ、そんなんでいけたんだ・・・・・」

「俺もやばいかなと思ったんだけど、まあなんとか。」

「向こうとしても夏目に逃げられたくないんだろうな。
  なんとしても勝負を成立させて、自分が勝ったことにしたいんだろ。
  こりゃ、心してかかった方がいいな、この後の飯島説得に。
  あいつも必死で抵抗してくるぞ。」

「・・・・・だね。 了解。」

「じゃあ、とにかく行こうか。
  鴻上んとこに。
  二人の女の子も、既に近くに来てるからさ。
  電話すればすぐに来れるところで待っててくれてる。」

「うん、良かった。
  最後の切り札だからね。」

「ああ。」

「よし、行こう・・・・・」

二人は、鴻上たちが待っているであろう換金所付近の自販機へと向かった。
 

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