ゴーストスロッター 第26話
勝負開始から4時間が経過した14:00。 ここで真鍋は、優司の台がどういった様子なのかをチェックしに行くことにした。 勝負が始まってから初めてのチェックである。 旧台コーナーへ行き様子を窺ってみると、未だに現金投資中の優司がそこにいた。 その状態を確認し、にんまりとする真鍋。 そのままつかつかと優司のもとへ歩いていき、したり顔で話しかけた。 「よぉ、調子悪いみたいだな。 だから言ったのによ。 旧台コーナーは危険だって。」 これに対し、特に焦った様子もなく答える優司。 「いや、そうでもないよ。 むしろ、俺的には今んとこいい感じだし。」 「は？ そ、そうなのか？ ・・・・・・あッ！ もしかして、BIG中のベル出現率か！？ そういえば設定差があったんだよな！？」 サンダーVは、BIG中のベル出現率に差が設けられていて、高設定ほどハズレが少なく、ベルの 出現率が高い。 とはいえ、2,3回のBIGで判別できるようなものではなく、最低でも10回程度はBIGを引かなければ 参考にできるようなデータは集まらない。 「まあ、そんなとこだね。 BIG7回引いたし、ある程度は参考になるくらいのデータは集まったからさ。」 それを聞いた真鍋は、優司の頭上にあるデータ機器を勝手にいじりながら履歴をチェックした。 「総回転数2500GでBIG7のREG6か。 とても設定6には見えないけどな。」 「俺のヒキだから参考にはならないよ。」 「それなら、BIG中のベルの出現率でもそのヒキ弱が炸裂したらどうすんだ？ それこそ参考にならねぇんじゃねぇか？」 「・・・・・・ヒキ弱ってのは、そういう部分には表れないモンなんだよ。 出玉に直結する部分で喰らうモンなんだ。 俺の場合はね。 ボーナス当選率とかストック機のBR振り分け、北斗の継続率とかさ・・・・・」 自分で言いながら虚しさを感じる優司。 理論的には、完全に破綻しているということを自分でもわかっているからだ。 破綻しているけども、実際自分にはそういう現象が降りかかるのだから仕方がない、と、今更ながらに 妙なヒキ弱に悩まされ続けてきた自分に怒りを感じた。 そんな優司の説明を受け、イマイチ納得できないような表情をしながら、再び口を開く真鍋。 「・・・・・そっか。 まあ、俺はそんなにヒキで悩まされたことはないからわかんねぇけど。」 そう言いながら、優司の隣りに座る真鍋。 不意に隣りに座ってきた真鍋に、少し身構える優司。 「・・・・・なあ、夏目。 一つ聞いてもいいか？」 なにやら元気のない声。 さっきまでの真鍋とは全く違うおとなしい感じ。 少し意外に思いながら返事をする優司。 「きゅ、急に何・・・・？」 「・・・・・あのさあ、例えば、あくまで例えばだけどよ、友達と何かで勝負して負けたとするだろ？ それで負けたやつが卑屈になっちまったとして、勝った方のやつはそいつのことをどう思うんかな？」 優司は、瞬時に察した。 日高とのことを言っているんだな、と。 だが、あえてそのことを黙っておくことにした。 「・・・・・さあ。 友達っていってもいろいろあるからね。 知り合って数週間の友達もいれば、ガキの頃からの友達もいるし。 でも、長い付き合いの友達とかだったら、いちいちそんなことで嫌ったり憎んだりはしないんじゃないの？」 「・・・・・・・・」 真鍋は、しばらく黙り込んだあと再び口を開いた。 「まあいいや。 仮にそれで仲が悪くなったとする。 でも、その原因は勝負に負けたことにあるんだから、もう1回勝負して勝てば、関係を修復できると 思わないか？」 「（もしや・・・・・）」 ピンときた。 不思議に思っていたことへの疑問が、優司の中で一気に解決へと向かっていった。 なぜ真鍋はここまで執拗に自分との勝負を迫ってきたのか。 その謎が大分わかってきたのだ。 日高に勝った自分。 そんな自分に真鍋が勝てば、再び日高と対等になることができ、そしてそれをきっかけに日高と 元の関係に戻りたいと考えているのだろうと。 自分との勝負に勝って日高の鼻を明かしたいのか？くらいに考えていたが、そうではなく、逆に元の 友人関係に戻りたがっているのだとわかり、少し意外さを感じた。 しかし優司は、何かに気付いた様子などおくびにも出さず、無表情のまま返答した。 「なんとも言えないな。 そういう状況になったことがないから。」 「・・・・・・そっか。 わかった。 なんでもねぇ。 今のはさっさと忘れろ。」 「・・・・・・・・・・」 「よし、じゃあ勝負の続きだ！ いまんとこ、俺の台はかなり6濃厚だぜ。 まだ1回も600G越えのハマリがないからな！」 ボンバーパワフルの場合、設定6ならば極端に600G越えのハマリが少ない。 丸1日打って、2,3回くらいしかないのだ。 うまくいけば、1度も600以上ハマらずに終わることもある。 真鍋は、まだボンバーパワフルの解析が出回っていない状況にも関わらず、自分や周りの人間の 稼動データをしっかりチェックし、こういった高設定の特徴を掴んでいたのだ。 優司はそのことを瞬時に察し、その能力・努力に内心驚くも、それを表情には出さずにサラリと流した。 「そうなんだ。 6濃厚なんだ。 そりゃ良かったね。 だけどさ、日高もそうやって最初は余裕だったよ。 でも、最期にはキッチリ形勢逆転した。 あんまりいい気になってない方がいいよ。」 「・・・・・ふん。 言ってろよ。 今回はどう考えても俺の勝ちだ。 ボンパワは、俺以外ガンガン600G越えてんだぜ？ 俺の台は間違いなく6だ！」 そう言い捨てて、自分の席へ戻っていく真鍋。 だが、その言葉を聞いても、一向に焦った様子のない優司。 「（・・・・・仮に真鍋の台が6だったとしても、俺に負けはない。 この台はほぼ間違いなく6なんだから。）」 台の側面部分を見つつ、自分の負けがないことを再確認した。 第27話へ進む 第25話へ戻る 目次へ戻る
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