ゴーストスロッター 第16話
「（あれ・・・・・？ 俺、なんでこんなトコにいるんだろう・・・）」 気付くと、そこは見慣れない街並み。 状況がわからず、ただキョロキョロするだけの優司。 その時だった。 「優司君！」 後ろから懐かしい声が聞こえた。 「え・・・・・？？ ゆ、由香・・・・・？？」 そこにいたのは、優司が初めてまともに付き合った女、飯島由香だった。 高校2年の冬に付き合い始め、約8ヶ月付き合った後に別れた女。 「な、なんでこんなとこに・・・・？ つーかここはどこなんだ・・・・？？」 「そんなことはどうでもいいじゃない。 それより、私は話があってここに来たの。」 「は、話・・・・・？？」 「うん・・・・・」 顔を赤らめながらうつむく飯島由香。 その様子を見て、どんどん期待と興奮の度合いが高まる優司。 それもそのはず、別れた時、優司はまだ未練タラタラだったのだ。 なんなら、今でも「できればヨリを戻したい」とすら考えていた。 優司は、美形とまではいかないものの、決して悪くはない容姿の持ち主。 その上、勉強・運動何をやらせても卒なくこなせるので、決してモテない方の人間ではなかった。 しかし、なんでもこなせてしまう反面、「これだけは人に負けない」というものがなかった。 要は器用貧乏。 一見なんでもできるように見えるが、裏を返せば強烈な強み・魅力を持たないということにもなる。 こんな優司に、女の子も最初こそ好印象を持つが、しばらくするとなんとなく飽きられてしまう。 今までも、何度か軽く付き合ったことはあるが、由香とのようにしっかりと付き合ったのは初めて なのである。 付き合っていた8ヶ月の間は、毎日のように会ったり電話をしたりしていた。 では、そんな彼女とどうして別れてしまったのか？ それは、優司が「大学へ行く」と口では言っていながら全く勉強しようとせず、由香との遊びや パチスロに没頭していたからだった。 パチスロを覚えたての頃の優司は、今現在悩まされているような病的なヒキ弱はなくしっかりと 勝ち越せていたため、特にパチスロへのハマリ方は大きかった。 基本的に、言動と行動が一致しない男を好む女は少ない。 「大学に進学する」と言っているのに、全く勉強せずにスロばかり打っているようでは、愛想を つかされて当然なのだ。 何かを期待させるような由香の態度を見て、たまらず自分から話を切り出す優司。 「話って・・・・ もしかして、俺ともう一度、みたいなことがあったり・・・・？」 「・・・・・・・うん。」 自分の鼓動が凄まじい勢いで早まっていくのがわかる。 首のあたりがゾワゾワっとし、自然と顔がニヤけてしまう。 「ほ、ほんとに！？！？」 「・・・・・・・うん。 やっぱり優司君じゃなきゃダメみたい。」 ********************************************************************** 「（・・・・・・だよな。 やっぱそうだよな。 分かっちゃいたけど。）」 朝目覚めると、そこはいつものカプセルホテル。 さっきまでの出来事が、すべて夢だったと気づくのにそう時間はかからなかった。 「（せめて夢ぐらいは楽しい方がいいなんて言うけど、あれは嘘だな。 逆に虚しいよ・・・）」 見た夢が楽しければ楽しいほど、覚めた時がつらい。 「（ま、いいや。 今の俺にはなんの関係もないことだ。）」 ズルズルと余計なことを考えていても虚しいだけ。 もはや、居場所すら分からない元彼女のことを考えてもしょうがないこと。 優司は、すぐにこのことに気付いた。 「（そっか。 昨日も日高たちと飲んで泥酔してたんだっけ。 結局何時頃寝たんだろう。 ・・・・・・って、そんなことより早くこの先どうするか決めないと。）」 今後どうしていくのか。 このことについて散々悩んでみてはいるが、一向に答えは出なかった。 「（せっかく細かいホールデータをまとめたノートもあるんだし、やっぱりもう1回だけまともにスロプーを やってみようかな。 この間の日高との勝負で北斗の6打った時も、ショボかったとはいえ一応プラス収支にできたわけだし。）」 確かに、一応はプラスになっていた。 たったのプラス4000円だが・・・・ ********************************************************************** 日も暮れだした頃、優司はあるホールへと入っていった。 しばらくホール内をウロウロしていると、なんと偶然にも『設定5・6確定』の札がついた花火百景が 目の前で空き台になった。 履歴的にも、完全に高設定の挙動を示していた。 当然迷わず座る優司。 「（よくこんな台が空いてたな！ こんなあっさりと百景の5・6確定台が取れるなんて・・・・・・・ 本当ツイてる！ これはもしやイケるんじゃないか！？）」 自然と笑みがこぼれる。 「（よくよく考えてみると、俺って『ヒキ弱』って部分を除けばそこそこ運がいい方なんだよな。 何事に対しても。 家を出るまでは経済的に恵まれてる環境だったし、受験も苦労したことないし。 今だって、サクっと百景の5・6に座れたりしたし。 なんでヒキだけはダメになっちゃったんだろう・・・・？）」 ふと湧き出る疑問。 だが、この疑問を解くようなヒントはどこにもなかった。 こればっかりは、まさに『神のみぞ知る』というような問題なのだから。 「（まあいいや。 今はそんなことはどうでもいい。 とりあえずはこの百景で運試しだ！ 閉店まで5時間もないけど、百景の5・6なら5時間近く回せれば充分！）」 演出などフルキャンセルで、とにかく回転数を稼ぐことに集中しながら回す優司。 すると、投資わずか5000円で見事BIGを手にすることに成功。 「（よし！ 俺にしてはかなり早い喰い付きだ！ 目標は閉店までに2000枚！ 多くは望まない、2000枚あれば充分だ！）」 第17話へ進む 第15話へ戻る 目次へ戻る
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