ゴーストスロッター 第137話
「(いてて・・・・・ あれ・・・・? こ、ここは・・・・・?)」 目を覚ますと、見知らぬ部屋のベッドの上にいた。 「(あれ・・・・? 俺、なんでこんなところに・・・・・・)」 優司は、自分が置かれている状況を全く把握できずにいた。 ぼーっとしたままあたりをキョロキョロ見渡していると、廊下の方からがやがやとした声が聞こえてきた。 なんとなく聞いたことのある声が。 ドアの方を見ていると、そのドアがすっと開いた。 「あれ・・・・!? 起きてんじゃん? 今意識あるんだよな? 夏目!?」 今部屋に入ってきた男たち・・・・・・・それは、日高と真鍋だった。 ************************************************************************** 優司は、見舞いに来た日高と真鍋から、事の顛末を聞かされた。 藤田に刺され、救急車で運ばれ即入院となったこと。 日高のグループにいる人間の知り合いが、優司が刺された現場にたまたま居合わせたため、 日高が連絡を受けすぐにこの病院へ駆けつけることができたこと。 自分が丸1日意識を失っていたこと。 そして、すぐに藤田が捕まったこと、などなど。 日高は、挨拶もそこそこに、矢継ぎ早にこれらのことを優司に説明した。 「そうなんだ・・・・・ 俺、そんなにやばかったんだ・・・・」 ようやく状況を把握し、改めて戦慄を覚えた優司。 そんなに危ない状況だったのか、と。 「いや、命に別条はないってさ。 ただ、出血量が凄かったってんで、こんなに意識を失ってたらしいんだ。 うまいこと急所を避けてたし、そもそもそんなに深く刺さってなかったらしいからね。 まあ・・・・・いろいろ医者が説明してくれたんだけど、よくわからなくてさ。」 そう言いながら、テレ笑いを浮かべる日高。 「とにかく、しばらくは安静にしとけ、だってさ。 夏目もいろいろあったし、ここらでゆっくりするのは悪いことじゃないだろ。」 「うん、まあ・・・・・ 確かにそうかも。 ・・・・・・・・・・で、あの・・・・・・・・本当、ここ最近は迷惑ばっかりかけて・・・・・・本当にごめん!!」 勢いよく頭を下げる優司。 土屋たちに加担し、結果この街を荒らすことになってしまったことを詫びた。 「お、おい・・・・・ 急にどうしたんだよ?」 おとなしく見守っていた真鍋も入ってくる。 「そうだよ! お前が謝ることなんてないだろ!? 土屋んとこでいいようにされて苦しんでたお前がさ。 むしろ、変な誤解をしてた俺らこそ悪かっただろ。」 「違うよ・・・・・・ 俺がパチスロ勝負なんてもんに変にこだわりすぎたから、こんなにややこしい事態になったんだ。 俺のガキっぽさが災いしたんだよ・・・・」 優司の弱気な発言に、日高が答える。 「どうしたんだよ夏目? らしくないじゃんよ。 入院で心が弱ったか!? なんにせよ、もう何も気にする必要はないんだよ。 全部終わったんだ。 また、今までみたいにツルんでさ、自由気ままに打ちまわろうぜ!」 優司は、無言ながらも、嬉しそうにニコリと微笑んだ。 日高もニコリと返した後、すぐに神妙な顔つきに変わった。 「で、パチスロ勝負の結果については・・・・・・神崎から聞いたよ。 あと、その後の警察沙汰のことも。 土屋たちの件については、これで解決だな。 あいつらもあれだけいろいろやらかしたんだ。 ちゃんと償ってもらわないと。」 「うん・・・・・・・」 「パチスロ勝負は・・・・・・残念だったな。 さすがに神崎は厳しかったか。」 「・・・・・・・・うん。 日高たちの言うとおりだった。 全然ダメだったよ、俺なんか。 完全に俺が間違ってた。 それについても本当に申し訳なかったよ・・・・・ 客観的に冷静な意見を言ってくれてたのに、なんか俺一人アツくなっちゃって・・・・・」 「しょうがないって。 あれだけ勝ち続ければ、人間誰しも冷静さを失うもんだよ。 もういいじゃん。 それも終わったことだ。 それに、もうパチスロ勝負とは縁を切るんだろ?」 「ああ、もうやらないよ。 ようやく卒業だ。」 ここで真鍋が口を挟んできた。 「お! ようやく大人になれたか夏目!? てっきり、『まだ乾が残ってる!』とか言い出すのかと思ってたら。」 「か、勘弁してよ・・・・ さすがにそこまでバカじゃないよ俺も・・・・ もう充分懲りたよ。」 「大体、乾に勝負を申し込もうと思ったところで無理だけどな。」 「え?」 「乾のヤツ、今外国にいるらしいぜ。」 「そ、そうなの!?」 「ああ。 なんか絵の勉強のために、つい最近留学したとかって話だ。 なあ光平?」 「うん。 まあ、小耳にはさんだ程度の話だからどこまで本当かわからないけどね。 とにかく、まともにスロを打ったりはしてない、ってことは確かだ。」 「や、やっぱりそうだったんだ・・・・・・ ほとんどスロは打ってないとは聞いてたけど。 それなのに俺、あんなに必死こいて勝負仕掛けようとしてたなんて・・・・・」 思わず苦笑いを浮かべる優司。 そんな優司の背中を軽く叩く真鍋。 「まあ気にすんなよ! 人生いろいろあるって! 元気出せ!」 「あ、ああ・・・・・ そ、そうだね!」 今度は日高が入ってくる。 「そうそう、あとさ、御子神さんにもちゃんとお礼を言っとけよ夏目? あの人のおかげで神崎も動いてくれたわけだし、俺達も事情がわかったんだ。 いろいろ気にかけてくれてたらしいぜ?」 「おう! そうだぞ夏目!? 大体な、あんな美人がなんでお前なんかにこんなに優しいんだぁ!? くそ!!」 「お、落ち着けよ遼介・・・・・ 密かに憧れてたのは知ってるけどさぁ。」 「べ、別に憧れてまではいねぇって!!」 「はいはい。 そうですよね。 わかりました。」 「て、てめぇ光平! なんで敬語なんだよ!? バカにしてんのか!?」 「いちいちデカい声出すなって!」 「お前がそういうこと言うからだろ!?」 途端に大声でやり合いだす二人。 「(こ、ここ病院なんだけどな・・・・ 挙句俺は、今さっきようやく目を覚ましたところだってのに・・・・・ でも、なんでかな。 妙に落ち着く。)」 延々と続く日高と真鍋のやりとりを、笑みをこぼしながら眺める優司だった。 第138話(最終話)へ進む 第136話へ戻る 目次へ戻る
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