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読者ライター【野菜】の記事14



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回胴人失格 [ 2016/4/5 ]

【第一の手記】
恥の多い生涯を送ってきました。
自分には、勝ち組スロッターとしての立ち回りというものが、見当つかないのです。

自分は昔から人混みが嫌いで、余程の事がない限りは、いつ潰れてもおかしくはない偏屈なホールへ通っていました。
時折、強い旧イベント日等には、大きいホールへわざわざ並んだりすることもありますが、そんなことをしたところで勝ったことなど、片手で数えられるほどしかないのであります。

多くの時間、スロットと向き合っておりますが、スロットはそういった無理を楽しむゲームであると思っていました。
設定6だとか、毎日別積みしている店だとか、そんなものは都市伝説。または幻。
自分の地域性も関係しているかもしれませんが、そう自分に言い聞かせていました。

しかしながら私も、毎日負けていたらいずれは破産し、死んでしまいます。

色々と調べてはゾーン狙い等を実践したことも沢山あります。
しかしなかなか身にはならず、其だけだと楽しくはなかったのです。

つまり自分には、立ち回りというものが何かすらわかっていない、となりそうです。

本当に勝ちたいのならば自らを律し、期待値がある台だけを狙えばいい。
打てる台が無ければひたすら待てばいい。
情報が少なそうな人を見繕ってその人の後ろに何時間も張り付けばいい。

しかしそれが私には出来なかったのです。
それは少なくとも私には楽しくなかったのです。

打ちたいのに打てない。
しかし打つと負ける。

そして財布の中、銀行の口座がどんどん減っていくのを見て、発狂しかけた事もあります。

勝ちたいけれども、せっかく遊びに来たのにつまらなかったら意味がない。
だけれども負けたくはない。

こんな我が儘な自分に嫌気がさし、まったくどうしていいのかわからないのです。

そこで考え出した答えが『道化』です。
それは、自分の、スロットに対する最後の求愛でした。
自分はスロットを恐れていながら、それでいて、スロットを思いきれなかったらしいのです。

そうして自分は、この道化の一線でわずかにスロットにつながる事が出来たのでした。

おもてでは、絶えず笑顔をつくりながらも、内心は必死の、それこそ千番に一番の兼ね合いとでもいうべき危機一髪の、油汗流しての稼働でした。


某月某日。
どうせ負けるのなら少しでも面白い台に座ろう。
そう決めて私はホールに足を踏み入れました。

低設定でも爆発して、尚且つ、面白い台。

GODはやめようか。
通常時が暇だから、これで負けたらいよいよ救いがない。

低設定でも爆発して、尚且つ、面白い台。

ああ、そうか。
オリンピアの台だ。
それなら自分にも心当たりがある。

面白く、出玉性能も高く、打っていて飽きない台。

『キャッツアイ〜コレクション奪還作戦〜』

これしかないだろう。
いや、これしかなかったのだ。

本当は戦国乙女2をまだ打っていなかったので、触ってみたかったのだが、1台も空いていなかった。
この地域はどうやら乙女ファンが人知れず多く生活をしているらしい。

実のところ、このキャッツアイという台はあまり打ち込んではいない。
詳しい数値等はまったく知らないが、出た当時から理由はなくつい座ってしまうことがよくあったのです。

早い当たりを祈り、毒にも薬にもならない通常時の演出を眺めていました。

ひさしぶりに打つこのキャッツアイという台は、特に思い出らしい思い出を自分に与えてくれていなかったのだな。
そう思うと、別段感慨深くもない。

こうなってくると何故この台に座ったのか、いよいよわからなくなってきてしまいました。

そして時間だけが過ぎ、嗚呼、どうして私はいつもこのようなことになってしまうのだろうか。


キャッツアイ


おそらく宵越しの天井であろう。
チャンスゾーンにも三度ほど突入したのだが、自分にはクリアできるほどの力量がなかったのでした。


投資は約1200枚程。
単発だと自分はいよいよおかしくなってしまう。
もうおかしくなってしまっても構わない。

そう、この時の自分にはもう、おかしくなる準備が出来ていたのでした。

 


【第二の手記】
スロットを打っている最中だというのに、誰かがこんなことを言っていたのを思い出していました。

『狂気の沙汰ほど面白い』

この言葉の真意は、自分ごとき凡夫には知るよしもない事なのであろう。

しかしながら少しはおかしくならないと、もうこの先やっていけない。
そう思っていたのです。

いや、既に怪しいものである。
本当はきっと、ブラクラの件から私は、どうかしているのでしょう。

何を打っても絶対勝てるという、奇妙で歪な自信だけが残ってしまい、実際のところ何をしても勝つことは出来ず、今現在、6000枚以上は偽物語、マジハロ5に吸いとられている始末。
あれだけ勝ったのにもかかわらず、これだけ負け続けていて、まともに居られようものですか。


さて、とにもかくにも初当たり。

この台で勝つにはスーパーキャッツラッシュに突入させる必要がある。
その為にはキャッツボーナスを引き、20Gのその間に7を揃える。
これが出来なければ、この台では勝てない。
それが出来れば、とても楽しくなってくる。
逆に言えば、そこしか楽しいところは無いのである。

これこそまさに、オリンピアの台と言ったところなのだろう。

このスタンスが多くの人々を虜にしてきている。
AT中にのみ、その楽しさの全てを余すことなく詰め込み、他を削る。
まったくもって潔いではありませんか。

自分は始まって早々、ここぞとばかりに多くのレア役を引きました。
強チェリーに、強スイカ。
キャッツボーナスを獲得するために、私は血眼になりながらレバーを叩きました。

それから数G後、キャッツボーナスが確定したのです。


キャッツアイ


瞬間、私はこのボーナス中に7を揃えることの為、沢山の事を犠牲にしました。

「晩御飯は抜きますから7が揃いますように」
「トイレをあと1時間我慢しますから、7が揃いますように」

といった願掛けのようなオカルト染みた事をひたすら考えておりました。


願掛けのおかげなのでしょうか、レア役は引けるのでした。

なのに7はいっこうに揃わないのです。

ここでも強チェリーを二度ほど引き込む。
しかし7は揃う気配がなく、もうこうなると溜め息も出ません。

しかしキャッツボーナスの終了画面を見て、おや?と私は思いました。


キャッツアイ


スーパーキャッツラッシュのランプが点灯しているじゃないか。
あまりの嬉しさから一人でそう声に出していました。

高いハードルを二度も越え、やっとこさ辿り着いたスーパーキャッツラッシュ。
その内容とは、20Gの間に約1/9.9のスーパーキャッツボーナスを引き続けるゲームです。
そして20Gのスーパーキャッツボーナス中にまた7を揃え、レア役等でスーパーキャッツラッシュのG数、通常ARTのG数を増やしていく、こういった具合の内容です。

つまりはここで頑張ることが出来るのなら、無限にG数は増えていき、万枚も夢ではないのです。


無事に駆け抜けることは免れて、二度目のスーパーキャッツボーナス中、赤いシャッターが閉まったのでした。


キャッツアイ


一体どれくらいのG数が上乗せされるのだろう。

しかしこの台のシャッターが閉まる瞬間というのは、なかなかにして筆舌にし難いものがあります。

まどマギの様にバシャーンと勢いよく閉まるわけでなく、レバーオンの瞬間、ぬるーっと目で追えるスピードで閉まる。
まるで自動ドアの様に。
これが気持ちいいのです。

こちらに、喜びまでの一瞬の猶予を与えるシャッターなのである。


その数G後のこと。


キャッツアイ


自分はもう、果てる寸前の高鳴りを覚えました。
これ程までに絶頂を迎えそうになったことはいまだかつてありませんでした。

そして気が付けば、随分と長いことスーパーキャッツラッシュを続けてこれている。

しかし名残惜しくも、スーパーキャッツラッシュはほどなくして終わりました。


キャッツアイ


平均はどれくらい続くものなのかは知らないけれども、これだけ出来れば上等といったところであろうか。

そしてプッシュボタンを押す。


キャッツアイ


嗚呼、なんてこった。
私は驚き、またしても声に出していました。


そしてその結果として、これ程までに多くのメダルを獲得するに至りました。


キャッツアイ


正にハイリスクハイリターンといったものである。


しかしながら、精神的にとても疲れた。 
その日は、珍しく勝てた喜びより、もうこれ以上負けることが無いよう、暫くはパチスロをおやすみしようかと、そう思い家路についたのでした。

 


【第三の手記】
明くる日、私はその日の予定が無く、家で録り貯めておいたアニメを観ながら、カリカリ梅をひたすら口にほうり込んでいました。

そしてアニメを見終われば、気付けば車にのり、ホールへ出掛けていたのです。

これには自らの事ながら、驚きを隠し得ませんでした。
何故ホールへ向かうのか、暫くは休むと思ったはずなのに。

しかし私の本心はわかっていたのです。
偽物語やマジハロに奪われ、蹂躙された自分の諭吉さん達をまだ全て取り返していないことを。

昨日の自分はその本心を、その真実を、奥深く圧し殺し、気づかないふりをしていたのです。
なぜなら、その方がこれ以上の被害を生まず、多少ではないにしろ、敗けは敗けでも、これはこれで良しとしたから、気付かないふりをしたのです。

だから、諭吉さん達を助けにいくと心が決めたのでした。
自分の本心に気付き、その想いを曲げないためにも、ホールへ向かうのでした。

しかし、この勇猛果敢にみえる決断にも、たった一つ、冷汗三斗の、生涯わすれられぬ悲惨なしくじりがありました。

それはつまり、『戦国乙女2』に座ったことでした。

脇目もふらず、真っ先に座った先が戦国乙女2。
まさかとは思うが、自分は本当はただこの台を打ちたいだけが為に、またホールへ来たのではないだろうか。
これが事実ならば、こんなに恐ろしいことはない。

しかし真に恐ろしいのは、稼働の内容にあったのです。

初当たりは約960G、乙女ボーナスと名乗りつつも、獲得枚数は100枚にも満たなかった事実に自分はぎょっとして、くらくら眩暈しました。

疑似ボが沖ドキのように連チャンすることが売りであるこの台は、90枚程吐き出した後、うんともすんとも言わず、何事もなかった顔で通常時に戻ったのでありました。

そこで止めるべきなのであろうが、もう一度当たるまでは、と続行を決意したのです。
理由はもう、今となってはわからないのでした。

しかし数十G後、ぼろ雑巾の様になった自分を、激励してくれる出来事が起こりました。

雀の涙ほどの持ちメダルが無くなり、追加投資をし始めた頃、リールロックが2段階目までいき、とてつもなく可愛らしい1枚絵が見れたのです。

これが、俗にいうところの『萌えカットイン』か。
このキャラは恐らく、よしてる様だろうか。

萌えカットインというわりには、りりしい顔をしているような気がしないでもない。


ぷぅん


戦国乙女2


戦国乙女2


うわああああああああああ
フリーズしたああああああ


突然の出来事に自分はそう叫びながら椅子から転げ落ちました。

1/65536を引いた、この奇跡に対する恩恵は、真乙女ボーナスと、80%のループでボーナスをストックし続ける『ユウサイバトル』、そして高継続の『真鬼神討伐』、これらが確定なのです。

その時の自分は酷く手汗をかいていたのを覚えています。

当初の目的である諭吉さん達の奪還、これを忘れていた訳ではないが、半ば諦めてはいたのでした。
しかしそれが実現する。
今、正に実現するのだ。

さあ、とくと見さらせ。
自分こそは、いやさ自分こそが、真の引き強養分であるのだ。


戦国乙女2

 


【あとがき】
自分はあのあとすぐに、自分に向けて微笑をするユウサイに瞬く間に殺されました。
ストックをほんの数分で消化し、真鬼神討伐は2連で終了しました。

そして出てきたメダルを全て、沖ドキトロピカルにぶち込み、またしても100枚に満たないボーナスを獲得しただけなのでした。

自分はこう思うわけです。
あの時に、あのフリーズを引いた時に、やれない人間はスロットなど打ってはいけないのだと。
そう気づいた私は、そのまま重たく冷たい心のドアを閉め、ガチャンと鍵を掛けました。

いまはもう自分は、養分どころではなく、狂人でした。
いいえ、断じて自分は狂ってなどいなかったのです。
一瞬間といえども、狂った事は無いんです。

けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそうです。

つまり、あの時に結果を残せず、沖ドキトロピカルを打つような者は狂人。
フリーズで何千枚と出せる者は、真のスロッターという事になるようです。

神に問う、引き弱は罪なりや?

ユウサイのあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判断も抵抗も忘れて沖ドキトロピカルを打ち、そうして自分に呆れ果てて、狂人という事になりました。
いまに、この自分の心のドアを開けたところで、自分はやっぱり狂人、いや、廃人という刻印を額に打たれる事でしょう。


回胴人、失格。
もはや、自分は、完全に、スロッターで無くなりました。
いまは自分には、幸福も不幸もありません。

ただ、一切は過ぎて行きます。
自分がいままで阿鼻叫喚で生きて来た所謂「スロット」の世界に於いて、たった一つ、真理らしく思われたのは、それだけでした。

ただ、一切は過ぎて行きます。
最近は知らないお爺さん達と、どうしようもない履歴のジャグラーを小突いては、ビッグかバケかで一喜一憂し、目押しのお手伝いしつつ、リハビリに励んでおります。

おわり。



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